今回の作品について
2020.7.4
おととい初日を迎え今日から折り返し。昨日までは20時の夜公演でしたが、今日からは17時の公演になります。実際の場所に入ってみることで見えてくること、聞こえてくる音、感じることが多々あり諸々調整しながら本番を迎え、そして実際に観客の方々と出会うことでまた新たな発見があり。パフォーミング・アーツの醍醐味はやはりこのライブ感なのだよなぁ、と改めて感じ入っております。そしてこれは今回の作品をやる上での大きなモチベーションでした。
本番2回を終え、少し時間的な余裕も出てきたので千穐楽に向けて創作ログを更新していきます。開場中お待ちの間のお供として、観劇後のお楽しみに、またご来場いただけなかった方々に作品のお裾分けとして。数日後や数年後に読み返してみるのも面白いかもしれません。
今回は本作品「ディスタンス」について。
大人少年としてのクリエイションはおよそ5年ぶり、間に三橋個人として他の方の作品に出演したりソロ作品を作ったりということはしていましたが、完全オリジナルの新作というかたちでは2014年末の「ダイニング」以来。(前作「出口なし」は元となる戯曲があったため)
当日パンフレットの文章としても寄せさせていただいたのですが、今回のクリエイションを通して「間」という言葉が浮かび上がってきました。
(以下文章の抜粋)
この作品のクリエイションを進めていく中で「間」という言葉が浮かび上がってきました
「間」は様々な読み方ができますが
いずれにしてもそこには一つ以上のモノやコトが想起され
「距離」という感覚に重なっていくようでした
私とあなた、出発地と目的地、始まりから終わり、連続性と分断…
不明瞭で曖昧、それでも確かに存在する「間」
フライヤー等へのコピーとしては「間(あわい)」という読みをあてました。「あわい」という言葉は響きとして知ってはいたのですが、ネットなどで調べてみるとなんとも奥行きのある言葉で。テーマとしてもまさしくのものなんじゃないか?と本格的にクリエイションに入る前に本などで勉強しようと思っていたのですが、コロナ禍という状況もあったり本の在庫が大型書店を回ってみてもないような状態だったので断念。ただこの「あわい」という言葉を自分なりに深めてみようという方針が見えました。
そして実際に6月に入ってクリエイションを始まりました。もともと今回はそれぞれご自身で作品を作るダンサーの方に声をかけていて、共同創作というスタイルにしようと思っていました。クリエイションを進めながらリハーサルも終盤に入った頃、出演者との「間」も面白いものだと感じました。いわゆるトップダウン的に振付を渡して演出していくという形ではなく、お互いに見合ったり意見交換をしながらクリエイションをしていく共同創作。演出家と出演者の「間」がアソビのような、余白のような、バッファのような。フワフワと曖昧なグレーゾーンがあったことでより濃密なクリエイションができたように思えます。
思えば前回作品を作った頃はまだ20代で、色々カッチリ決めたり引っ張っていかなくては!みたいな気負いがあったようにも思います。年齢のせいなのかはわかりませんが、今回は「おまかせ」や決め切らないことを楽しむ余裕があります。会場が劇場ではない、完全に演出しきれない空間だということも大きかったかもしれません。そして「おまかせ」にできるダンサーの方々の存在も大きかったです。
実は今回大筋や大枠、演出のポイントは決めてありますが9割出演者のタスクワークで構成しています。演出家が決め切らない、各自が判断するという「間」が面白いとクリエイションを通して感じられ、また大切なことなのだと思いました。